子どもに「ADHDに関連する遺伝的傾向」があると両親が離婚しやすくなる可能性
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注意欠如多動症(ADHD) は多動性や衝動性、不注意などを特徴とする発達障害であり、子どもがADHDを持つかどうかには遺伝的要因も大きいといわれています。4万組の親子を対象にした新たな研究では、「子どもがADHDに関連する遺伝的傾向を持っていると両親が別居したり離婚したりする可能性が高い」という結果が示されました。 When children shape their families: Evocative effects analysis of 40,000 trios from the Norwegian Mother, Father and Child Cohort Study | PNAS https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2532642123 A child's genetic profile for ADHD can predict their parents' risk of separation https://www.psypost.org/a-childs-genetic-profile-for-adhd-can-predict-their-parents-risk-of-separation/ 家族を対象にした研究の多くは、「親が持っている遺伝的特性や家庭環境が、子どもの性格や発達にどのような影響を与えるのか」といった点に着目しています。実際に親の遺伝的特性が家庭環境を間接的に形成するとの 研究結果 も報告される中で、研究者らは「親から子どもという一般的な方向とは逆に、子どもたちの遺伝的特性が親に影響を与えることはあるのか」という疑問を抱くようになったとのこと。 遺伝的特性についての研究で用いられる統計的手法のひとつに、特定の疾患や形質に関わる複数の遺伝子を考慮し、それが疾患や形質にどの程度影響しているのかを算出した ポリジェニック指数(ポリジェニックスコア) があります。ポリジェニック指数は実際の生物学的メカニズムや絶対的な素因ではなく、あくまで遺伝子に基づいたリスク推定値といえます。 ポリジェニック指数を家族力学に応用する研究はすでに始まっており、養子縁組に関する2024年の 研究 では、子どもが持っている遺伝的特性が養父母の接し方に影響を与えることが示されています。また、2025年の 研究 ではADHDに関連する遺伝的特性が、間接的に虐待を受けるリスクを高める可能性があると示唆されました。 今回、アメリカのパデュー大学やノルウェーのオスロ大学の研究チームは、子どものADHDに関連するポリジェニック指数が、親の「もう1人子どもを産む」「未婚だったパートナーと結婚する」「関係を解消する、あるいは離婚する」といった人生設計に及ぼす影響を調査しました。
研究チームはノルウェーで収集された母子コホート研究のデータを分析しました。データには母親・父親・子どもからなる4万組について、妊娠中および出産時に採取された血液サンプルに基づく遺伝子データが含まれていました。また、ノルウェーの行政登録簿から結婚・離婚・出産といった人口動態の変化を追跡し、子どものさまざまな身体的・精神的ポリジェニック指数との関連性を調べました。 今回の研究で重要な点は、両親のポリジェニック指数を考慮に入れることで、子どもの遺伝的特性が家族環境に及ぼす具体的な影響を分離できたという点です。つまり、子どもと似た遺伝的特性を持つ親の影響を排除し、純粋に子どもの遺伝的特性がもたらす影響を分析できたというわけです。
分析の結果、子どもが持っている行動面および身体面のポリジェニック指数のほとんどは、家族の人口統計学的イベントに有意な影響を与えないことが判明。たとえば、ぜん息やボディマス指数(BMI)、認知能力といった特性は親が次の子どもを持ったり、結婚したり、離婚したりする可能性を予測するものではありませんでした。 しかし注目するべき例外として、子どもの「ADHDに関連するポリジェニック指数」が高いことは、両親が別れたり離婚したりするリスクの増加と関連していることがわかりました。具体的には、子どものADHDポリジェニック指数が 標準偏差 で1上昇するごとに、両親が別れたり離婚したりする確率が相対的に7%上昇しました。 さらに詳しくデータを分析したところ、子どものADHDポリジェニック指数と両親が別れることの関連性は、主に「娘を持つ家庭」によるものだと判明。子どもが女児だった場合、ADHDポリジェニック指数が標準偏差で1上昇すると両親が別れる確率が11%増加しましたが、男児の場合は4%未満の増加率にとどまり、統計的に有意な数値にはなりませんでした。
今回の結果について研究チームは、女児のADHDは明らかな多動性よりも注意力不足や感情調節の問題として現れることが多いため、ADHDだと診断されず見過ごされがちだと指摘。その結果、両親は子どもがADHDだと認識して対応することができず、問題行動が積み重なって家庭関係に負荷がかかる可能性があるとのこと。 また、子どものADHDポリジェニック指数に関連して両親が別れる確率が高まるのは、教育水準が平均以上の家庭において顕著であり、社会経済的地位が平均以下の家庭では、両者の関連性は有意ではありませんでした。研究チームは、ADHDに関連する行動上の問題は社会経済的地位が高い家庭で要求される教育・発達水準と衝突し、家庭内に不和を生じやすいのではないかと考えています。 なお、今回の研究は福祉国家であり男女平等も進み、家族支援制度が充実しているノルウェーで行われたものです。そのため、制度的な支援が少ない国や結婚に関する文化的規範が異なる国では、同じような結果が再現されない可能性があるとのこと。また、研究に参加した家庭は社会経済的地位の高い家族がやや多く、さまざまな逆境に直面している家庭が過小評価されている可能性もある点に注意が必要です。
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