「和の精神」が世界の分断緩和? 高市政権がうたう「哲学外交」
日本の哲学を海外発信し、外交に生かそう――。政府がそんな取り組みに乗り出した。親日派を増やし、本邦の主張を通しやすくするらしい。なにせ米国追従が目立つ日本外交である。付和雷同は改めたいが、気になるのは「哲学」の中身だ。かつて戦争に利用された歴史もちらつく。はて、日本の哲学とは?
突然だが、外務省の予算資料をご覧になったことはありますか。<文化外交の抜本的強化:「背水の陣」>。今年度はこんな見出しの下、<日本への信頼、好感度、親近感の増強>がうたわれている。他にも<国家のイメージやナラティブをめぐる情報戦に効果的に対応>など、とにかく緊迫しているのだ。
そんな現状認識から登場したのが、哲学の外交活用である。日本文化コンテンツの積極展開に加え、<コンテンツの背景ともなる哲学・思想を分析・発信。深みのある外交を実践し、世界で独自の存在感を示しイメージ向上>を図る狙いだ。グローバルサウス(新興・途上国)諸国に対する日本の理解促進や連携強化が強調され、約2億円の予算が付いている。
一体どんな哲学を対外発信するのか。実はこの方針、既に読売新聞が一報しているのだが、例示されたのが聖徳太子の「和をもって貴しとなす」だ。有名な「十七条憲法」の1条である。近代日本を代表する哲学者・和辻哲郎の名も挙がる。西洋哲学の個人主義に対し、他者との「間柄」を重視した。つまり、調和や対話が大事ということか。<深みのある外交>を掲げる割に、SNSでは「薄っぺらい」などと非難が目立つ。
「文化外交は大切で、どの国も取り組んでいます。でも、哲学外交となれば政治と切り離せません。『日本は和の精神です』と説明して真に受ける国がありますか」
あきれるのは、元外務官僚の天木直人さんだ。駐レバノン大使だった2003年、米国のイラク戦争を支持した小泉純一郎政権の外交に異を唱えた。そんな気骨の人は今春、「高市新外交が世界と日本を救う」と題する著書を出版した。憲法9条に基づく平和主義が持論だけに意外な書名だが、「右翼、タカ派、改憲論者の総理」が「これまで以上に対米従属に走っている」として、外交姿勢の転換を迫る内容だ。本書に天木さんの外交官経験が紹介されている。
「計8カ国で在外勤務し、茶道や着物などの伝統文化、邦画の紹介にも努めました。でも、よく質問を受けたのは戦時中の神風特攻隊のことです。特にレバノンでは(イスラム教シーア派組織)ヒズボラの最高指導者だったナスララ師から『我々に自爆攻撃を教えてくれたのはカミカゼだ』と言われてね。自己犠牲の精神に共感したと……」
天木さんがため息交じりで続ける。「海外要人に今の日本を理解してもらいたいという思いは分かります。でも、口先だけで行動が伴わなければ信頼は得られない。総理がトランプ米大統領の横で跳びはね、数々の国際法違反に苦言すら呈さないようでは説得力がないでしょう」
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