善意で助けたのに45万円支払いに 「人助けする?」中国で論争
中国南部・湖南省で8月、体調を崩した高齢者を助けようとした人物が1万9000元(約45万円)の補償金を支払わされる理不尽な出来事が起きた。中国では善意の救護者がトラブルに巻き込まれる事件が後を絶たず、「人助けをすべきか、避けるべきか」が改めて論争になっている。
報道によると、湖南省衡陽市の田舎町で8月17日、高齢男性が通りに面した店舗の入り口にある椅子に座って休んでいたところ体調が急変。女性店主が駆け寄って救護に当たったが、男性は搬送先の病院で死亡した。警察の調査では、男性は突然の病死とされ、女性店主の善意の行動に過失はないと判断された。
ところが、男性の遺族は「店主にも責任がある」と主張して10万元(約240万円)の賠償金を請求。警察の勧めで双方は地元の調停機関で協議することになった。最終的に、店主側が折れる形で「人道主義による補償金」として1万9000元を支払うことになった。
その後、この出来事をメディアが取り上げると、理不尽な遺族の要求とそれを認めた調停機関に、世論の非難が殺到した。改めて当局が事態収拾に動き、遺族は後日、全額を店主に返還したという。
中国では類似の事案が後を絶たず、2017年の民法総則の改正で、善意から救護活動を行った人はその民事責任を問われないとする救護者保護条項が特に設けられたはずだった。
それでもなお「善人が損をする」事態が繰り返され、国内のSNSでは「危なくて人助けなどできない」「救護するときは映像を記録しておくべきだ」などの声が上がった。
実は、住民間のトラブルを地域の調停機関で処理することは、習氏の看板政策の一つ。毛沢東時代の大衆動員による治安維持運動「楓橋経験」として全国で奨励され、「小さな問題は地域で解決し、上に持ち込まない」を原則にうたう。
しかし、今回の事件で明らかになった通り、法令による公正な判断よりも、事態の収拾を優先する「事なかれ主義」が露呈するのが実情だ。国営メディアも「治安維持の圧力を、法を守る国民に転嫁してはならない」と苦言を呈した。【北京・河津啓介】
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