ノーベル化学賞の白川英樹さん死去 90歳 電気通すプラスチック
電気を通すプラスチックの発見と開発で2000年にノーベル化学賞を受賞した筑波大名誉教授の白川英樹(しらかわ・ひでき)さんが8月24日、横浜市内の病院で死去した。90歳。葬儀は家族で営んだ。1週間ほど前に入院していたという。
1936年、東京生まれ。父が陸軍軍医で、少年時代は台湾や旧満州(現中国東北部)などで過ごし、44年に戦禍を避けるため岐阜県高山市に転居した。61年、東京工業大理工学部を卒業。66年に工学博士を取得し、78年10月まで同大助手を務めた。助手時代に取り組んだのが、ノーベル賞の受賞理由となったプラスチック「ポリアセチレン」の合成だった。
ポリアセチレンは当時、粉末でしか存在しなかった。留学生にポリアセチレンの実験の指導をしていた時、留学生が誤って、化学反応を速めたり遅らせたりする触媒を1000倍も多く入れてしまった。
出来上がったポリアセチレンは粉末ではなく、金属の光沢を放つフィルム状で、容器に張り付いていた。プラスチックは電気を通さない絶縁体と考えられていたが、金属のように「電気を通すのでは」と直感した。失敗から画期的な業績が生まれた瞬間だった。
この成果に、一緒にノーベル賞を受賞した当時、米ペンシルベニア大教授だったアラン・マクダイアミッド氏が注目。米国に招かれ、マクダイアミッド氏ら3人で共同研究を始め、76年11月に高い導電性を持ったプラスチックの開発にこぎつけた。
金属に比べ加工しやすく軽いという特徴から、テレビやコンピューターなどに不可欠な電解コンデンサーに利用されている。リチウムイオン電池やATM(現金自動受払機)のタッチパネルなどにも使われ、現代の生活に広く浸透している。導電性プラスチックを応用したインクを使い、プリンターで印刷して集積回路や配線を作る技術も開発されている。
83年高分子学会賞受賞。00年には文化勲章を受章し、文化功労者にも選ばれた。シドニー・オリンピックの女子マラソンで金メダルに輝いた高橋尚子さんとは、白川さんの祖父と高橋さんの大祖母が兄妹という親戚関係にある。
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