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左右対称で典型的な「AIっぽいきれいな顔」は買い物客を遠ざけてしまう可能性

GIGAZINE ·
左右対称で典型的な「AIっぽいきれいな顔」は買い物客を遠ざけてしまう可能性

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中国ではインターネットのライブ配信を通じて商品を売り込むライブコマース市場が成熟しており、中にはAIで生成された「AIストリーマー(AI司会者)」によるライブコマースもあります。そんなAI司会者の「顔の魅力」が配信を視聴するユーザーに与える影響について調べた研究結果を、中国の研究チームが発表しました。 The power of facial allure: How AI streamer facial physical and emotional attractiveness drive consumer engagement - ScienceDirect https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0148296326002948 The "perfect" AI face may be turning shoppers off https://www.scienceofmoney.org/why-the-perfect-ai-face-may-be-turning-shoppers-off-1088/ 中国の大手通販サイトであるタオバオやショート動画SNSのTikTokには、ライブ配信をしながらさまざまな商品を販売できるライブコマース機能が搭載されています。中国では特にライブコマースが盛んであり、 100兆円規模にまで成長 しています。 近年は生身の人間ではなくAIストリーマーによるライブコマースも登場していますが、小売業者らは「AIストリーマーの見た目はどのようなものが最適なのか」という問題に直面しています。長年にわたる人間の顔の魅力に関する研究は、顔のパーツや輪郭が左右対称であり、多くの顔の平均を取ったような「典型的な顔」をより魅力的だと評価する傾向がわかっています。

しかし、AIストリーマーは生身の人間ではなくAIによって生成された人工的な顔であり、視聴者側もそのことを理解しています。そのため、ロボットやイラストなどの顔がリアルな人間に近づくにつれて、好感ではなく違和感や嫌悪感が高まってしまう 不気味の谷現象 がAIストリーマーにも生じる可能性があるとのこと。 そこで中国の重慶工商大学や電子科技大学などの研究チームは、ライブコマースにおけるAI司会者の顔が視聴者のエンゲージメントに与える影響を調べるため、2024年2月~7月にタオバオで行われた347回のライブコマースセッションのデータを分析しました。ライブコマースはタオバオの全12種類の商品カテゴリーにまたがっており、それぞれ異なるAIストリーマーが登場していました。

AIストリーマーの分析において、研究チームは顔の魅力を「身体的魅力」と「感情的魅力」の2つに分類しました。身体的魅力は、顔にマッピングした68個の点が正中線の両側でどれほど非対称なのかを示す「顔の非対称性」と、サンプル内に含まれる顔の平均とどれほど似ているのかを示す「顔の典型性」という2つの項目で評価されました。 そして感情的魅力は、AIストリーマーが配信中に示した喜びや驚きといった表情の数に基づく「感情の豊かさ」と、表情を表した時の顔が中立的な静止状態からどれほど動いたのかを示す「表情の強さ」という2つの項目で評価されました。 ライブコマースにおける視聴者のエンゲージメントは、いいね・シェア・新規フォロワー・新規メンバー・コメントを統合した指標で測定されました。研究チームは視聴者数・動画時間・商品価格・性別といった要素を考慮に入れて、AIストリーマーの顔の魅力とエンゲージメントの関連性を分析したとのこと。

分析の結果、人間の顔の魅力についての常識とは反対に、「顔の典型性」が高いことはエンゲージメントの低下と関連していることが判明。つまり、AIストリーマーの顔が平均的で画一的なものであるほど、視聴者の反応は鈍くなったというわけです。また、「表情の強さ」が高いこともエンゲージメントの低下と関連していました。 一方、「顔の非対称性」が高いことはエンゲージメントの増加とわずかながら正の相関関係を示し、これも人間の顔の魅力に関する常識に反していました。一方で、AIストリーマーの「感情の豊かさ」はまったく測定可能な効果をもたらしませんでした。この点について研究チームは、ライブコマースの視聴者はAIストリーマーの感情表現を意味のある社会的シグナルではなく、単なる背景雑音として無視している可能性があると考えています。 研究チームはこれらの結果について、ライブコマースのAIストリーマーにおいては、「確立された美の基準」が逆転するのではないかと主張しています。生身の人間では、顔の対称性や典型性は適性や信頼性を示す指標となりますが、AIストリーマーではこれらが人工性を示す指標となり、わずかな非対称性が本物らしさの指標として働くというわけです。 また、AIストリーマーの顔を「生身の人間に近いタイプ」「アニメや漫画のキャラクターに近いタイプ」で分けたところ、AIストリーマーが人間に似ているほど左右非対称のメリットが大きくなり、典型的な顔のデメリットが大きくなりました。一方、AIストリーマーが人間に近いほど「表情の強さ」によるデメリットは軽減されたとのことです。 さらにライブコマースで販売されていた商品タイプに注目すると、「顔の非対称性」が高いことのメリットは娯楽品や自己表現に関連する商品で特に大きいことが判明。一方で商品が実用的なものであった場合、顔の非対称性はかえってエンゲージメントを低下させました。この結果は、左右非対称の顔はだらしなさや不正確さを連想させ、信頼性や能力を重視する実用品販売には向いていない可能性を示唆しています。

今回の研究結果は、AIストリーマーにあえて目の位置や眉の形、口の曲線などに左右非対称性を組み込むことで、特に娯楽目的のライブコマースで効果を発揮する可能性を示唆しています。研究チームは、「人間らしさを最大限に追求するという単純な戦略は、最適とは言えないだけでなく、有害となる可能性もあります」と述べました。 なお、今回用いられたデータは単一のプラットフォームと特定の文化圏から得られたものであり、文化圏やプラットフォームが異なれば結果も変わる可能性があります。また、あくまでAIストリーマーの顔とエンゲージメントの相関関係を調べた観察研究に過ぎないため、「特定の顔が高いエンゲージメントを引き出す」という因果関係を証明したわけではない点にも注意が必要です。

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