七島イで織り上げるひんやり畳表 生産減少変えた20年前の出会い
畳表の材料となり、国内では大分県国東(くにさき)市安岐(あき)町だけで栽培されているカヤツリグサ科の植物「七島(しちとう)イ」。イ草のようなスポンジ構造のない三角形の断面が特徴で通気性に優れ、夏も畳や特製のラグマットに寝転べば、ひんやりとした肌触りで涼める。
1960年代には、大分県内で年間550万枚ともいわれた畳表の材料となった。その丈夫さから、柔道畳としても重宝され、64年の東京オリンピックの柔道会場でも使用された。しかし、輸入品のイ草が主流となっていったことや農家の高齢化で、生産量は徐々に減少していった。
失われつつあった伝統の流れを変えたのが約20年前。大分県中津市で畳の販売店を営んでいた細田利彦さん(71)と、安岐町の生産者、松原正さん(70)が農業イベントで出会ったのがきっかけだった。
30代で実家にUターンしていた松原さんの生産する畳表の質の高さに、細田さんが着目。2人は品質管理やブランド化で協力し、2010年に「くにさき七島藺(い)振興会」を設立した。
畳表に使われない余った分でラグマットやござ、草履といった工芸品を売り出すとメディアでも取り上げられ話題に。移住者らの新規参入もあり、現在は安岐町で9軒の農家が七島イを栽培。年間およそ1000枚の畳表を生産している。
松原さんがUターンした当初は価格が安く、採算が取れなかった。夫婦で朝晩は農地で汗を流し、日中は町工場などで働きながら、4人の子どもも育ててきた。妻の恵美さん(65)が「人間のすることじゃないと思ったね」と苦笑しつつも、夫婦は「収穫の喜びと織る作業の面白さ、2度楽しみがある」と伝統を守り続けてきた。
振興会の事務局長を務める細田さんによれば、今は注文に生産が追いつかないほど人気が高い。松原さん夫婦の畳表も、今年の生産分は、購入予約が埋まっているという。【岡田愛梨】
七島イは、2013年に世界農業遺産に認定された「大分県国東半島宇佐地域農林水産業システム」の構成要素の一つ。現在は国東市安岐町にある9軒の農家が栽培し、うち7軒の農家が畳表を生産。くにさき七島藺振興会事務局(0978・65・0800)。
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