裁判Plus 司法のリアル:感染、差別の二重苦だった「薬害エイズ」和解30年で遺族が手記
非加熱血液製剤でエイズウイルス(HIV)に感染した血友病患者と遺族が国と製薬会社を訴えた「薬害エイズ訴訟」で、30年前に和解を勝ち取った当事者たちが、初の手記集「その扉の向こうに 和解から30年 遺族の軌跡」を出版した。
手記をまとめたのは、大阪訴訟の遺族らでつくる「たんぽぽの会」。大阪、京都、兵庫、奈良、滋賀、石川といった地域に住む遺族を中心に、患者や会を支えてきた弁護士、臨床心理士ら計30人が寄稿した。
中学生だった息子のHIV感染を知った父親は、夜間警備の仕事中に人知れず涙した記憶をたどった。息子の亡きがらは医学のために献体。後に「内臓がぼろぼろになっていた」と聞かされたという。
息子を亡くした母親は今も消えない自責の念を記した。「私の処(ところ)に生まれてこなければまた別の人生を長く幸せに生き続けられたのかもしれなかったでしょうに、ごめんなさいね」
今では薬の服用で発症を抑えられる病気だが、当時は「死の病」と恐れられ、患者や家族は感染と差別という二重の苦しみの中で生きることを余儀なくされた。
会の共同代表、杉山千波さん(73)は「心の奥底にある苦しみは消えないが、手記を出せたことは私たちにとっての集大成。エイズに限らず、社会にはさまざまな差別が存在する。無意識のうちに差別する側に立ってしまっていないか、考えるきっかけにしてほしい」と話している。
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