冷房なしで被災生活送る高齢者、死亡リスク5%上昇 九州大など
熊本地震の被災地で冷房のない環境で過ごす高齢者は、地震発生から30日間の死亡リスクが5%上昇するとの推計を九州大などの研究チームが発表した。被災地は過酷な暑さが続いており、自宅の損壊や車中泊などで冷房環境が十分でない被災生活は、リスクが高いことを示す結果となった。
最高気温が40度を超えるなど危険な暑さが続く近年、地震や大雨で冷房環境を失った高齢者など社会的弱者の健康リスクが深刻化している。熊本地震でも車中泊をしていた熊本県氷川町の女性(76)が死亡。死因は熱中症とみられ、今回の地震で初の「災害関連死」の疑いとされた。
大規模災害が発生した直後は、道路の寸断や通信障害などで「情報の空白」が起こり、被災地の被害状況や住民の支援ニーズを迅速かつ正確に把握するのは難しい。現地から詳細な情報が届くまで、地域ごとの支援の優先度やニーズの特定などを把握できる仕組みは限られてきた。
研究チームは、熊本県が発表した熊本地震の住宅被害の総数(8月1日時点)や震源地からの距離などに基づき、県内の住宅データと照らし合わせることで居住の実態があり、被災している住宅数を算出した。
その上で、冷房環境のない住宅で生活を送る65歳以上の数や、発生から30日間の冷房の必要性、気温の推移に伴い冷房の有無がもたらす死亡リスクの差を推計した。推計には人工知能(AI)を用いた。
その結果、被災地で冷房環境が損なわれた住宅は約300棟、影響を受ける65歳以上の高齢者は約250人と試算。これらの住宅で過ごす高齢者の死亡リスクは冷房がある場合と比べ、発生から30日間で平均5・34%上昇すると分析した。
研究チームは今後、自治体などと連携しながら、地域ごとの支援ニーズの「見える化」やインフラの分散など災害の備えに対応できるような社会実装を目指す。九州大大学院工学研究院の馬奈木俊介・主幹教授(都市工学)は「数%の上昇でも、危険な暑さの影響が被災者の命に関わることをデータが示している。平時から災害弱者が集中する地域や冷房、電力などが停止した時の影響が大きいインフラをデータに基づいて特定し、優先的に投資する必要がある」と強調した。【田崎春菜】
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